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2023.06.19
LRでは、2023年5月30日、リスク・アドバイザーであり、ダイアログK合同会社顧問 黒田長幹様をお迎えし、「地政学リスクと今後のリスクマネジメントのあり方~ロシアによるウクライナ侵攻が我々に与える示唆~」と題するセミナーを開催いたしました(トムソン・ロイター株式会社様セミナールーム及びZoomでのハイブリッド開催)。
黒田様からは、地政学リスク、リスクマネジメントの概要のご解説をいただき、ロシアによるウクライナ侵攻を題材に歴史的な背景も踏まえ俯瞰的な視点でのご講演をいただきました。
冒頭では、かつて外交官を志しながら経済の観点から国際社会に関わるため当時の日本輸出入銀行(現国際協力銀行(JBIC))に入行しその間二度のロシア赴任も経験したご自身のキャリアがまさに地政学であったことを振り返りながら、数字を用いたクイズでテーマの重みに身構えていた参加者の雰囲気を和らげていただきました。クイズの答えは、国土面積、人口、GDPについてロシア、ウクライナを交えた国際比較に関するもので、基本情報を大事にする今回のテーマに繋がっていくものでした。
また、旧ソ連崩壊前後の1990年代以降のロシアを取り巻く歴史的な事象、文脈に説明を加え、普段日本にいるとなかなか目を向けにくい事実について客観的な視点を提供いただきました。その上で、それぞれの立場に立った場合、どういうことを考えるかという課題設定により、地政学リスクの切り口によるリスクマネジメントの基本的な考え方を示していただきました。
その後活発な質疑が行われ、昨今やはり話題になっている人権リスクと地政学リスクとの間でトレードオフはあり得るのか、組織としてリスクに向き合いながら判断する前提としての情報収集や人材育成のあり方、国土としてはロシアと隣接する日本の立ち位置といった質問が寄せられました。さらに、歴史的な意味で日本による満州国の建国とウクライナ侵攻に類似点、相違点があるとすればどのようなものか、現地での連絡体制の実情といった、参加者の日頃の問題意識が強く反映した質問も上がりテーマへの強い関心を改めて窺うことができました。
最後に、黒田様は、秋月黒田家の系譜も持ち福岡県の朝倉市秋月博物館の名誉館長として国内の歴史と文化の継承にも尽力されており、その紹介をもってセミナーを締め括りました。地理的条件や経済に加え、歴史、文化、人間のありようへの洞察を伴う多面的な視点でリスクを捉えそれを管理、対処するという貴重な示唆をいただいたように思いました。LRでは今後も随時お役に立つ企画を進めていきたいと存じます。